初恋の向こう側

ぶつかったといっても、それほど衝撃は食らってない。


「別にいいよ」


そう言って通り過ぎようとしたとき、その小さい影が俺の顔を指でさした。


「あーっ!」

「え?」


思わず立ち止まったけど。


「深崎の佐伯君、ですよね?」

「…そうだけど」


って誰……この娘(こ)?

そのとき。


ダーン ババーンッ


とびきりデカいのが上がって空に大輪の花が咲いた。

花火の灯りに照らされて、浴衣を着たその娘の顔がはっきりと見えた。


「綺麗ーっ」


そう言って微笑んだ口元に八重歯が顔を出し ―― あっ……思いだした。


「前にバス停で」


俺の言葉に、その娘の笑顔が弾ける。


< 196 / 380 >

この作品をシェア

pagetop