初恋の向こう側
ぶつかったといっても、それほど衝撃は食らってない。
「別にいいよ」
そう言って通り過ぎようとしたとき、その小さい影が俺の顔を指でさした。
「あーっ!」
「え?」
思わず立ち止まったけど。
「深崎の佐伯君、ですよね?」
「…そうだけど」
って誰……この娘(こ)?
そのとき。
ダーン ババーンッ
とびきりデカいのが上がって空に大輪の花が咲いた。
花火の灯りに照らされて、浴衣を着たその娘の顔がはっきりと見えた。
「綺麗ーっ」
そう言って微笑んだ口元に八重歯が顔を出し ―― あっ……思いだした。
「前にバス停で」
俺の言葉に、その娘の笑顔が弾ける。