初恋の向こう側


次の日、立ち寄った土産物屋でヒロを見かけた。

最近また、ぐんと大人っぽくなったヒロ ―― というより女っぽくなったというべきか。

話をしたり近くで顔を見ることがない近頃だから、余計にそう思う。

前より長くなった髪とか仕草とか。


ヒロは数人の友達と一緒に楽しげに土産を選んでいた。

あの家庭教師にも何か買って帰るんだろうか?

自然と湧いたのは、そんな疑問。


「梓真!」


ふいに名前を呼ばれて振り向くと、愛莉が近くに立っていた。


「何度か呼んだんだけど梓真、全然気づかないんだもの」

「え? あっ、ごめん」


すると愛莉は、わざとらしく辺りを見回しながら言った。


「いったい誰に見惚れてたのぉ?」

「誰も見てなんかないって」


「そお?
ねぇ、ちょっと話さない?」


そして、店の外に見えるベンチを指した。


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