初恋の向こう側

ペンキの剥げかけたベンチに座ると、前を向いたままの愛莉が話を始めた。


「ごめんね梓真?
理ってばバカだからメールを送り間違えるなんて」


……。

メール、送り間違い?


「あたしも最近になって知ったの。茉紘もすぐに話してくれなかったし。
夏祭りの時に、行かないって言ったのもそれが原因だったんだね」


しみじみとそんなことを言う愛莉。
でも話の内容がさっぱり読めない。


「ほんっとに理が、ごめんっ」

「ちょっと待って愛莉、なんの話?」


尋ねると愛莉は、目を丸くして俺の顔を見た。


「もしかして、茉紘に聞いてないの?」

「だから何を?」

「理が、梓真に送るメールを茉紘に間違って送ったって話」

「そんなの聞いてないよ。どんなメール?」


愛莉が説明してくれた。

そのメールが送られたのは八月に入ったばかりの夏休み中で、進路ガイダンスがあった日の夜のことだった。


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