初恋の向こう側
逢坂 ―― 下の名前は確か……温人。
逢坂 温人(おうさか・はると)っていうのか、あの男(ひと)。
一度しか聞いてないのに俺もよく覚えてたよな。
「別に絡んでなんてないけどさ」
「ヤキモチでしょ?」
「誰がだよ?」
すると愛莉はクスッと笑みを溢した。
「梓真と茉紘って昔から知ってるわりには、お互いのことをよくわかっていないよね?
もう一年以上も前の話だけど、梓真から話した方がいいんじゃない?
ちょうど誕生日だったでしょ? あの夜、梓真の家を出た後も日付が変わるまで外で待ってたみたいよ」
え。外で……?
そこまでは聞いていなかった。
「あいりー!」
店から出てきたヒロとその友達が愛莉を呼んだ。
ヒロは俺に気づくと、わざとらしく視線を逸らした。
「それじゃあね梓真、あたしからはそれだけよ」
「わかったよ。ありがと」