初恋の向こう側
修学旅行から戻った二日後のことだった。
バイトの帰りに駅を出て家までの道を歩いていた。
公園の横を歩いていたとき、俺の横を通り過ぎて行った車があった。
久しぶりに見たその黒いステーションワゴンは、俺達の家の方角へウィンカーを上げ曲がって行った。
家庭教師は夏休みで終わったはずだけど……そんな戸惑いが浮上する。
だけど今日は朝から決めていたんだ。
オサが送り間違えたメールのことを、去年の夏祭りのときのことを、ヒロに話すんだって。
路地へ入るとき、ヒロを降ろしたばかりのその車とすれ違った。
そして、家の前にはヒロの姿があった。
あのとき「家庭教師ってデートの相手もしてくれるんだ?」って皮肉った俺に、ヒロは何も言い返さなかった。
だけど、付き合ってるのか? って訊くと、違うって否定したんだ。