初恋の向こう側

愛莉が一人で俺の家に来るなんて初めてだ。


「突然、どうした?」


訊ねると

「どうして来たのかって?
本当はね茉紘の家に行くつもりで来たんだけど、先にここへ来るべきかなって思って」

軽く笑って、持っていた鞄を机の上に置いた愛梨。


そして「二人は、いつから話してないの?」と俺を見た。


「誰と?」なんて訊かなくてもわかっている。

愛莉は俺の返事を待たずに続けた。


「ずっとギクシャクしちゃってるでしょ?前からおかしいとは思ってたんだけど、学校でも一緒にいるところずっと見てないものね。

ねぇ梓真、修学旅行から帰って話したの? 前にあたしから聞いたこと」

「……」

「梓真!」


それは、例えば弟とか後輩だとか、そういった年下の人間に話すような口調で。


「話そうとは思ってたけど、さ…」


勢いに押されたっていうか、なんとなく口ごもってしまった。


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