初恋の向こう側


そして年が明けた。


去年はヒロと行った初詣に、今年は千尋と出かけた。

短かい冬休みが終わると、バイトの休みのたびに千尋とデートを重ねた。

テスト前には一緒に図書館で勉強をして、バレンタインも誕生日も千尋と過ごした。

大抵のカップルがそうであるように、大切な日やイベントがある時、そして何でもない普通の日にも彼女と過ごす。

それが自然で当然のことだから。

だけど。

なんていうか、俺は何処か必死だった。無意識のうちに自分のことを誤魔化しているみたいだった。

蓋をしたその場所が疼かないように、騒ぎださないように、一生懸命に繕って千尋との時間を重ね、埋めつくそうとしていたんだ。

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