初恋の向こう側



それは、春休みを控えた三月のある日のこと。


風呂あがりに階段を駆け上がりドアを開け、手探りで部屋の明かりを点した俺は、

「ウ、ウワーッ!!!」

叫び声をあげた直後、驚きのあまり尻もちまでついた。


「梓真、何かあったのー?」

階段の下から母さんが叫ぶ。

「いや……な、なんでもないよ」


階下へ向かって答えてからドアを閉め、そしてベッドの上に座っている人物に目を向けた。


「なによ。そんなに驚かなくったっていいじゃない?」


動揺しまくってる俺に、飄々とした態度で言ってのける。


「なにがだよ? 不法侵入だぞ!」


久しぶりすぎるヒロの訪問に、戸惑いを隠せなかった。

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