初恋の向こう側
部屋に来ることだけじゃない。
こうやってちゃんと顔を合わせ話をすること自体、どれくらいぶりだろう?
慌てふためいている心の中を悟られないように視線をはずすと、見透かしたようにヒロが口を開いた。
「みずくさいよねー、梓真って」
「は?」
「ねぇ、あたしたちの仲ってそんなもんだったの?」
ベッドの上で腕組みをして胡坐をかいていたヒロがその姿勢を崩し、手をついて前のめりになる。
そして大きな瞳で真っ直ぐに俺を見つめ、言葉を続けた。
「教えてくれてもいいのに。なーんにも言ってくれないなんて」
「だから何の話だよ?」
「彼女ができたこと報告してくれてもいいのに」
「……」
思わず息を呑んで視線を泳がせた。
とりあえず座ろうと思うが、ヒロの隣に座ることに躊躇して、俯き気味に椅子に腰をおろした。