初恋の向こう側

「ヒロの方は、あの神大の彼氏とうまくやってんの?」


何となく話題を変えたかったのかもしれない。


「何それ?
もしかして温人君のこと?」

「うん。付き合ってんだよな?」

「何言ってるの? 違うよー」


笑うヒロ。


「だって前に言ってたじゃん?
『ただの家庭教師じゃない』って」

「うーん。それは言ったかもしれないけど。
でも付き合ってるだなんて言った覚えはないよ」


急激に胸が騒いだ。


「じゃあ『ただの家庭教師じゃない』ってどういう意味だよっ?」


思わず声を荒げた俺に、キョトンとするヒロ。


「あの時は確かにそんな言い方をしたかもしれない。それは、梓真が温人君のことで絡んできたことあったじゃない? それとお祭りのことへの皮肉からかな。

それにあの頃ね、ママの状態が不安定でちょっと大変だったの。パパは帰りが毎日遅いし……。
それで彼には病院について行ってもらったり色々お世話になってただけだよ」


絶句するしかなかった。

マジかよ? ウソだろ。
付き合ってないなんて今更なに言ってんの? シャレになんねーって。


── 何かが疼きだす。

心の片隅で騒ぎ、暴れだす。

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