初恋の向こう側
暖かな日差しが降りそそぐ窓辺。
「佐伯君はどこを受験するつもり?」
ファミレスの四人掛けの席、向かいに座っている千尋に尋ねられた。
「え?」
ぼんやりとしていた。
そんな俺を見て千尋がクスッと笑う。
「志望の大学の話。
佐伯君って最近、ボーっとしてばかり。春だからかなぁ?」
クスクスと無邪気に笑う千尋の顔を午後の明かりが優しく照らす。
そんな様子を眼に映すたび、直視することをキツく感じる。窮屈で逃げたくなる。
一週間も経てば四月になる。
どんどん流れていく季節の中で、俺の中で渦巻く感情が立ち尽くす。
キツくて窮屈に感じるのは、どんな気持ちのせいなのか?
……よくわかっているんだ。