初恋の向こう側
結局、映画館まで行ったものの満員で入ることができずに俺達は、どこかでお茶でもしようかということになった。
「また今度にしようよ?」
「せっかく楽しみにしてきたのにー」
仕方なく、千尋が前から行きたがっていたカフェへと向かっていた。
ヒロとは何度か行って、お茶をしたり飯を食ったことがあるカフェだ。
雰囲気が良くて食べ物も美味しくて、ついでに働いている女の子も可愛いんだけど。
最後にヒロと来たのは、いつだったかな?
つい、そんなことを考えてしまう俺だった。
「わたし、佐伯君の友達にも会いたいな。ねっ、今度紹介して?」
隣を歩く千尋が不意に俺を見上げた。
「友達?」
「うん。会ってみたいの」
ニコニコと頷く彼女。
「……それなら、鈴井のことを知ってるんじゃない?」
そう返すと、千尋は頬を膨らませて。
「もともと鈴井君は、わたしの幼なじみだよ!」
と俺を睨み付けた。