初恋の向こう側
「俺の友達に会ったって面白いことなんてないと思うけど?」
これ以上、彼女が踏み込んでくることを自然と拒んでいる自分に気づかされる。
「面白くなくたっていいの!
わたし、佐伯君と付きあえたことが今でも信じられないの。ずっと憧れて見てるだけだった佐伯君が、わたしの彼氏だなんて……。時々、一人になった時に思うんだよ。これは夢なんじゃないかって……」
立ち止まり俯く千尋。
その頼りなげで小さな肩を見ていると、気持ちとは裏腹な言葉がこぼれでた。
「夢なんかじゃないよ。
俺はちゃんとここに、千尋の隣にいるし」
ゆっくりと顔を上げた千尋が安心したように笑顔を向ける。
そして蓄積されるのは、やはり痛みの他にないんだ。
まさに、悪循環。
初めから好きじゃなくたって付き合ってるうちにそうなれる。
オサと愛莉のように時間を重ねる中で少しずつ……。
俺は、本気でそんなことを信じていたんだろうか?
ただ、自分の気持ちを誤魔化しただけなんじゃないか。
これは“逃げ”だったんじゃないか。
千尋との時間を重ねながら、俺の想いは別な方へ逸れていく。
最初から、わかっていたことかもしれない。