初恋の向こう側
「申し訳ありません。ただいま満席でして」
カフェの入り口で店員が頭を下げた。
「仕方ないよ。別のとこ行こ?」
見るからにガッカリしてる千尋に言葉をかけた時、店の中から俺の名を呼ぶ声がした。
「アズマ!」
立ち上がり手を振るオサと、その向かいには愛莉の姿もあって。
「佐伯君のお友達?」
「え?……ああ、うん…」
千尋と一緒のところを知っている誰かに見られることに気まずさを感じてしまった。
オサが千尋の存在に気づいて手招きをしている。
「どうされますか?」
さっきの店員が尋ねてきた。
突っ立ったままの俺を不審がるような千尋の視線を感じて、仕方なくオサ達のいる場所へ足を向けた。