初恋の向こう側
「はじめまして!安西千尋です」
はにかみながら千尋が自己紹介すると、その向かいに座るオサが応えた。
「俺はオサム、田所 理。
アズマとは中学ん時から一緒なんだ」
そして隣に座る愛莉の肩に手を置いて
「それから、こっちが俺の彼女の愛莉」
と続ける。
紹介され「どうも」と愛莉が軽く頭を下げた。
オサと愛莉と俺と、それから ──
いつもは隣にヒロがいたのに、いまは千尋が座っている。
どうしてもそのことに違和感を感じてしまっていた。
「痛っ!」
突然、左脛に蹴りが入って思わず声をあげた俺。
咄嗟に真向かいを見るが、愛莉は知らん顔してるし。
「佐伯君どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
きっと、さっきから一言も話してない俺への合図なんだろうけどさ。