初恋の向こう側


次の日、バス停のベンチに座って時計を見上げた。

時刻は午後3時46分。

今日はバイトも休みだ。

来年は受験もあるから、あの古本屋も夏休み前には辞めようと思っていた。


千尋が来てくれるかどうかは、正直わからない。

もしかするともう先に来ていて、図書館の窓から見ているのかもしれない。

でも、それでもいいんだ。待たされてもいい。

どんなに遅れて来てもいいから話を聞いて欲しいと願った。


目の前の風景を眺める。

いつもは目を止めることもない景色をゆっくりと目で追った。

車の波や行き交う人の群れ。
ビジネスマンに親子連れ、恋人同士……。

こうやって眺めていると、知らない人間なんてみんな幸せそうに見えるけど。それぞれの生活があって皆、色んな悩みを抱えているのかもなってそんなことを思った。

俺の人生なんて、始まってまだ十七年と三ヶ月しか経っていないんだ。

これから高校を出て大学へ行って、大人になって ――


何年か経って十七歳だった自分のことを振り返った時に俺は

「なんてくだらないことで悩んでいたんだろう?」

って、笑っているんだろうか……?

 
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