初恋の向こう側
どのくらい座っているだろう。
ふと視線を落とすと、アスファルトの上にでき始めた水玉模様が瞳に映って。
「なんだ雨かよ」
時計を確認すると、もう少しで七時を回るところだった。
振りだした雨は徐々にその粒の大きさを増し、俺の肩を濡らしていく。
どこかで雨宿りするしかないかな……。
辺りを見回すため立ち上がろうとした時、視界を鮮やかなピンク色が遮った。
それは、頭の上に差し出された傘だった。
「ヒロ…」
顔を上げると、傘下の大きな瞳が俺を見つめていた。
「バイトの帰り?」
そう尋ねてきたヒロに「今日は休みなんだ」と答えて立ちあがり、「持つよ」と傘の柄に手をかけた。
ヒロが頷いて、二人で一つの傘に入る。
「そっちは病院の帰り?」
「うん。でも部活で遅くなっちゃったから、顔を見ただけですぐ帰ってきたけどね」
“相合傘”っていうのは、こんなに距離を狭めるもんだったかな?
微かに触れ合うブレザーの袖を意識してしまう。
こんなことくらいで、どうしたんだよ ――?
心臓が高鳴るのを抑えられずにいた。