初恋の向こう側

それで全部やり直すんだ。

生まれ変わらなくてもいい。戻るのは五歳の俺でもいいんだ。

あの頃に戻って、もう一度ヒロに出会って ――


それが駄目なら二年前まで遡って、高一の春に三年ぶりに再会する。

そしてまたヒロに恋をして、もう周りクドいことなんてせずに素直に自分の気持ちを伝えるんだ。

ちゃんと向き合って、いっぱいになった胸の内を明かしたい。


「あ…」


その時、ふと思いしたことがあった。

あの雨の日、千尋が来る前にヒロが言っていた言葉。

“別な計画”
“梓真に相談しようと思ってたんだ”

ヒロは俺に何か話そうとしてたんだ、あの時……。

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