初恋の向こう側
「こんなとこで居眠りなんてどういうつもり?」
頭上から声がして目が覚めた。
ゆっくりと辺りを見渡すと……それは見慣れた風景。
右側に顔を向けると自宅の玄関があって、そして ――
「まったく。 他人の家の玄関前で寝るなんて何の真似だか。よく座ったまま、しかも外で寝れるわね?」
目の前には腕組みをして仁王立ちしてるヒロがいて
「そこの角を曲がったら家の前に男が座ってるもんだから、ちょービビったんだから。絶対に変質者だと思った!」
大きな溜め息を落とされた。
「ごめん。ヒロの帰りを待ってたんだ。
でも変質者はないだろ? あそこからなら俺だってわかんなかった?」
綺麗な輪郭のラインを見上げ、瞳でなぞりながら問いかけた。
「わかったよ、すぐにね。
それでなーに? あたしの事待ってたなんて何か用事でもあった?」
眉根を寄せて俺を見下ろすヒロ。
視線をぶつけ口を開きかけるが、言い淀む。
立ち話なんかで済ませたくない。きちんと話がしたかった。
「ヒロ、久しぶりに部屋に来ないか?」
「…部屋って梓真の?」
「うん」
まるで初デートに誘うみたいな、そんな風にドキドキしながら答えを待った。
だけどヒロは笑いながら、こう言ったんだ。
「彼女と順調そうだね、梓真」