初恋の向こう側
「雨の日にバス停で会った子でしょ? 小柄で可愛いかったね」
その瞬間、ズキっと胸の奥に痛みを感じた。
でも今日は簡単に退散するつもりはない。
だからまだ浅い傷口を覆って、持ち直そうと俺はヒロに問いかけた。
「あの時にヒロ、何か言いかけてたろ?
計画があるんだとか俺に相談したいことがあるって」
するとヒロは、ああ、あれねと軽く答えて
「もういいの。解決したから」
って、あっさりと話を閉じた。
なんだか妙に素っ気ないその態度が気になった。
「なんだよ?」
「だから、もう済んだ事だから」
「……話がしたいんだ。来いよ?」
顔を覗き込みながら真顔で問うと、ヒロは茶化すように応えた。
「駄目だよ。彼女持ちが他の女を気安く部屋にあげちゃ」
「他の女って……そんなヒロは、」
言いかけた言葉にヒロの一言が覆い被さる。
「ただの幼なじみ、でしょ?」