初恋の向こう側
閉会式が終わり会場を出たところで、ポケットに突っこんでおいた携帯が振動した。
From 安西 千尋
Sub ありがとう
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もう少しで行くからロビーで待ってて?
短く返事を打ち、そのまま歩いてロビーへと向かった。
壁に背を預けて立っている俺のポケットで、また携帯が振動する。
取り出して見ると画面には
【着信 椎名 茉紘】の文字。
ボタンに触れ耳にあてようとした時
「佐伯くーん!」
ドレスの上にカーディガンを羽織って駆け寄ってくる千尋の姿が目に入った。
「待たせちゃったでしょ。ごめんね?」
「いや、大丈夫」
答えながら俺は、静かに降ろした手の中で電源ボタンに指を置いた。