初恋の向こう側
「なんでだよ?」
家へ帰り食卓テーブルの上に置いてあるそれを確認した俺は、率直な疑問をぶつけた。
それなのに。
「だから電話でも説明したでしょ? 同じことばかり聞かないでよっ」
うんざりと言った口調で言い返された。
千尋と別れてすぐにかけ直した電話にでたのは、うちの母さんで。
『なんで母さんがでんだよ?』と尋ねると『あんたがしつこく鳴らすからでしょ』と返ってきた。
いやいや答えになってないし。知りたいのはそこじゃなくて。
『なんでウチにヒロの携帯があるのか?』 って訊き返そうとした時、帰宅したばかりの真央が部屋に入ってきて。
そして間もなくヒロの携帯を見つけ母さんに尋ねた。
「カワイイ~! これダレの?」
「茉紘ちゃんが忘れてったらしいの。お父さんが預かってほしいって持ってきたのよ。出張でしばらく留守にするからって」
俺の質問には埒の明かない答え方しかしてくんなかったくせに、真央には随分とスラスラ説明するもんだ。