初恋の向こう側

そして、その二時間後。

俺は成田にいるわけでもなく、放置しっぱなしだったチャリを起こし跨っていた。

三万円ものタクシー代を払ったあとは、電車を乗り継いで帰ってくる予定だった。

でもその心配の必要もなく途中でUターンして戻ってきたんだ。

料金メーターが二千円を超えたところだったと思う。

握りしめていたヒロの携帯が鳴りだして、なにげに確認したモニターに表示されたのは

【着信 逢坂 温人】

しばらく鳴ったあとで静かになったと思ったら、またけたたましく歌いだす。

うるせーな!
ヒロはいま不在だっつーの。

心ん中で悪態をつくが相手に伝わるはずもなく。


「出ないのかい?」


運ちゃんに尋ねられ着うたはうるさすぎるし、仕様がなくボタンを押したんだ。

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