初恋の向こう側

「……もしもし?
あの、持ち主はいま留守です……けど」


ぶっきらぼうに告げると相手は戸惑ったのか少しの間黙っていた。

そして、痺れを切らす数秒前、ようやく返事が返ってきた。


「もしかして梓真?」

「……ヒロ?」


電話をかけてきたのは例の家庭教師ではなく、ヒロだった。


成田へ着いて携帯を持っていない事に気づいたヒロは、自宅やヒロのオジさんの携帯に電話をしたが繋がらなかったらしくて。

それで一緒にいる元家庭教師、逢坂温人の携帯を借りて自分の携帯へかけた。

問題点はただ一つ、何故二人が一緒にいるか? って事。

単なる見送りってわけじゃない。今回の留学に同行するっていうのだ。


「梓真が持ってるなら安心したわ。どこかで落としたんじゃないかって思ってたの。
それじゃあ、あたしが帰るまで預かっておいてね?」


携帯を握りしめたまま凍りついている俺になんて気付く事もなく、ヒロは早口でそう言って電話を切った。

少しの間放心していた俺はタクシーを止めて、それで運ちゃんに来た道を戻ってくれと頼んだんだ。

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