初恋の向こう側
こんなつまらない夏休みは、生まれて初めてだ。
去年はバイトがあったからよかったけど、もう辞めちゃったし。
オサや他の学校の友達、それから街で偶然会った中学の時の同級生に遊びに誘われることもあったけど、適当な理由をつけて断っていた。
つまんないって思うんなら誘いに乗ればいいんだろうけど。
海へ行ってもナンパに繰りだしても、カラオケで熱唱しても合コンに参加しても、とても盛り上がれそうになかった。
受験生なんだから勉強に励めばいいんだろうが、こんな気分でそんな没頭できるかよ。
しかも暑いし……夏だから仕方ないけどさ。
あの元家庭教師がカナダへ一緒に行ったってことは愛莉も知らなかった。
もちろん短期留学のことは知っていたわけで、やっぱり俺だけ知らされてなかったんだと思ったら腹が立つより脱力してきた。
『旅行じゃなくて留学だもの。二人は付き合ってるわけじゃないし心配することないわ』
愛莉はそう言ったけど考えずにいられるかよ。そんな長い間、異国へ旅立った二人をさ ──