初恋の向こう側


「ねぇ、お兄ちゃん。花火しない?」


ある日の夕方、居間でぼーっとしていた俺に真央が言った。


「花火……ってまだ外は明るいぞ?」

「いいじゃないやろうよ!昔みたいに」


無邪気な笑顔を向けられて断れない気分になる。

重い腰を上げて「仕様がねーな」なんて言いながら庭へ出た。


「お兄ちゃん、勉強してる?」

「いやあんまし。お前は?」

「あんまり。でもお兄ちゃんよりはマシかな」


真央も受験生。

いつまでも幼稚だと思ってた妹も、近頃はちょっとだけ大人びてきたように思う。ギャーギャー喚かなくなったし。


「ねぇ、お兄ちゃん?」

「んー?」

「お兄ちゃんは茉紘ちゃんのこと、どう思ってるの?」

「はあ?」


思わず口をあんぐりして真央を見たが、以外にも妹は冷静な顔をしていた。

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