初恋の向こう側
「前に付き合ってた彼女とは別れたんでしょ?」
「…まぁな」
「じゃあ、茉紘ちゃんがカナダへ行ってて寂しい?」
「な、なんでそんなこと聞いてんだよ?」
「ねぇ、寂しい?」
「………」
俺をからかおうとして笑ってるならともかく、真剣な眼差しで手元の花火を見つめている妹を怒る気になれなかった。
「どうしたんだよ急に?」
それでも兄の威厳を保つため、なんでもない風に尋ねると真央が言った。
「お兄ちゃん、あたし好きな人がいるんだ。
同じクラスの子にずっと片思いしてたの、あたし……。
サッカー部で勉強もそこそこできる人でね、二年の時はあんまり喋ったことなかったんだけど。でも春ぐらいから授業中や休憩時間に目が合うことが多くなって……夏休みに入る前の日にメルアド聞かれたんだ」
「で、連絡とってんの?」
「うん。会う約束とかはしたことないんだけど、結構いい感じだと思う」
「ふーん。いい奴なのか?」
「うん。性格もいいよ」