初恋の向こう側
真央からこんな話題を振ってくるなんて初めてのことで、俺の方が照れくさくなってくる。
「まだ付き合ってるとかじゃないんだろ?」
「うん。ストレートに言われたことはないんだけど、この前メールに『付きあって』に似たような言葉は入ってた」
「それでお前はなんて返したの?」
聞き返すと真央はフッと笑って答えた。
「気づかないふりしてごまかしちゃった」
「なんでだよ?」
そこで黙って俯いてしまった真央。
「どした?」
言いながら静かになった花火の棒を水のはったバケツへ放り投げ、新しい一本を手に持つ。
それに倣うように真央も手を伸ばし、子供用みたいなウサギの絵のついたやつに火をつけた。
「お兄ちゃん、その彼、冬になる前に転校するんだって。
親の転勤でお父さんはもう先に単身赴任してて、あとからお母さんと行くらしいの。だから高校もそっちで受験するみたい」
「本人から聞いたのか?」
「ううん友達から聞いた。それも県外らしいんだ」