初恋の向こう側
「アズマー!」
不意に呼ばれて振り向くと、数十メートル先にいるオサが、ニカッと歯を見せて立っていた。
「なんだよ?」
やる気なく聞き返すと
「アズマはバナナボートとクルージング、どっちがいいー?」
と叫ばれた。
「……」
だから、さっきからずっとそんな気分じゃないって言ってるだろ。
ぼそっと心ん中で呟いてみるが、テンション上がりまくりの親友にこの声が届くわけもなく。
俺はひらひらと片手を振ることで意思を示して、今日の宿となるキャビンの建っている場所へ向かって歩きだした。