初恋の向こう側
ぶつけたいのはやまやまだけど、面食らい過ぎて何も言えないでいる俺にいつもの調子で言ったヒロ。
「あっ 梓真、ちょうどよかった。あたしの鞄も持ってくれる?」
……っておい。
それが久しぶりに会った俺への第一声?
「いつ帰ってきたんだよ?」
「昨日だけど。あれっ オバさんに聞いてない? お土産持って行ったんだけどなぁ」
とぶつぶつ言っている……って、そういう問題じゃなくて。
「そうじゃなくてっ。他になんか言うことないの?」
「え。言うこと?……あっそっか。
ただいま梓真!」
「おかえり………じゃなくてっ あるだろ他に!」
「あ。携帯預かってくれてどうもね。返して?」
もういいよ……。
あきれるしかないヒロのペース。
体の底から湧き出るような深い溜め息を吐きだした。
でも俺は反面、安堵していたんだ。
ヒロがカナダへ旅立つ前は話もできなくなってた俺達なのに、こうやっていつもの勝手なヒロに会えて、普通に話すことができて安らいでいたんだ。