初恋の向こう側
「ダメ! そんなんじゃ満足できないっ」
そう言って、眉間に皺を寄せるヒロ。
逢坂さんの声は微かに聞こえるけど、なんて言ってるかまではわかんなくて、やり取りまでは不明のまま。
「うん、うん。そう……じゃあ、」
そこで俺の顔をチラリと見上げ
「悪いけど、さっき言ってたとこまで行ってほしいの……お願い」
甘えた声をだした。
「ちょっ、何の話してんだよ?」
妙な胸騒ぎを覚えて尋ねると、俺の目の前に手を出して“待て!”のポーズ。
なんだそれ!?
思わず頭がカッとなる。
そして間もなく携帯を閉じたヒロが、ゆっくりと見上げて一言放った。
「梓真のアホ!」