初恋の向こう側
上から覗きこんできたヒロの目は見開き、おまけに眉はつり上がり口はへの字に曲がっている。
「昔から、どうしてそう鈍いかな!?」
「鈍いのはそっちだろ?
なんであんな時に電話に出るんだよ!」
「じゃあ説明してあげる。
温人君が『コンビニには小さい花火しかないからどうする?』 って。それじゃ満足できないから、もっと遠くのスーパーまで買いに行ってて言ったの。だからしばらく帰って来ないと思うわよ。それに愛莉たちだって…」
「なんでわざわざそんなとこまで行かせてんだよ?」
「はあーっ?」
顔を上げるヒロ。
「なにキレてんの?」
俺も起きあがった。
「まだわかんない? なんのために遠くまで行かせたと思ってんのっ。
男ならキメるとこキメなさいよ!」
「だからキメようとしたのに─っ」
俺の言葉はそこで遮られた。
その理由は、予期せぬ事態が起こったから。
言い返そうとした勢いは、ヒロの唇で塞がれ制止されたんだ。