初恋の向こう側
何が起こったのかわかんないくらい突然の出来事だった。
唇の感触より、見開いた目に映った顔の影によって事態を把握した。
「キメるっていうのは、こういうこと」
唇を離しヒロが言う。
「………」
「なんか言いなさいよ?」
── ったく。
「ちょっと!」
「なに俺の役割とってんだよっ」
「それは、梓真がもたもたしてるから」
「もたもたって……。
だって、俺達にとってはファーストキスだぞ? もっと慎重にキメたいじゃん」
手が届きそうで届かなかったヒロ。そっと手を伸ばし髪をなでた。
頬を包み指先で唇に触れ、ゆっくりと顔を近づけて瞼に口づけた。
触れられそうな距離にいて、それでいつも身をかわされてた。ずっとそんな感じだったように思う。
でも、もうそうはいかない。
逃げられないように強く抱きしめて、その心の中へ潜りこもう。