初恋の向こう側

「ヒロ」

「うん」


「好きだ」

「………」


「好きだよ」

「あたしも。
 初めて会ったあの小さな頃から、ずっと梓真だけが好きだったの」


顔を傾けるとヒロがそっと瞼を閉じた。
そっと肩に手を置いて、ゆっくりと降下する。

触れた皮膚の感触が強まっていくのは、重なりあう面積が広がっていくから。

だけど面積以上に強く温もりを感じるのは、ヒロへの想いがあるから。


ヒロの唇は、想像以上に柔らかく不思議と甘い味がした。

キスなんて、誰としたってそんなに変わりないって思ってた。でも違う。

好きな女の子と交わすキスは、特別なんだ。

とろけるように甘いくせに、痺れるくらい切なくなる。

突き抜けるほど刺激的で、かなり格別な ── そんな不思議な味がしたんだ。


< 326 / 380 >

この作品をシェア

pagetop