初恋の向こう側
「温人君がどうかしたの?」
訊き返したヒロに、愛莉に代わってオサが答えた。
「ここの従業員の人が見たらしいんだ。
少し離れた国道で大きな事故があったんだって。たまたま出くわしたその人が写真を撮って……ここにいるスタッフに送ったみたいなんだけど……」
「なんだよ?」
言葉を濁したオサに苛立って俺も一歩前へ出る。
「そ、そこに写ってた車のナンバーが ─」
「オサッ!」
「逢坂さんの、車のナンバーと同じだって……車種も色も」
そこで溜まりかねたみたいに愛莉が泣きだした。
なんだよ。まだ早いだろ? そんな顔すんなって。
「聞いただけだろ? そうと決まったわけじゃないだろ」
言いながらテラスへ向かう。
窓を開け、脱ぎ散らかしていたスニーカーへ足を入れた。
「どこ行くの梓真?」
後ろを追ってきたヒロ。
「事務所へ行ってスタッフに頼んでみる。その事故現場へ誰か連れて行ってくれないか」
「あたしも行くっ」