初恋の向こう側

* * *


通夜の夜。


「アズマ、茉紘のことお願いね?」

「オレ等にもできることあったら何でも言ってくれよ」


愛莉とオサの言葉に黙って頷いて、その姿を見送った。

耳を澄ますと、打ち上げ花火の音が遠くから微かに聞こえる。

それにハモるように『茉紘のことお願いね』愛莉の言葉がリフレインしていた。

でも俺にできることといったら、ただ黙ってヒロの側にいてやることしかできなくて。

情けなさすぎて、何より一粒の涙も流さず気丈に振る舞うヒロが切なかった。

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