初恋の向こう側

「花火、今年も見れなかったなぁ」


その声にハッとして振り向くと、いつから居たのか、喪服を来たヒロがすぐ後ろに立っていた。


「出てきて大丈夫なのか?」

「うん。もうほとんどの人は帰ったから」

「そっか……ごめんなヒロ」


まともに真っ直ぐに目を合わせる事が出来なくて、ぼそりと言ってからそっと横顔を伺った。


「何が?」

「去年も一昨年も夏祭りに連れて行けなくて」

「うん。
だから今年は梓真と一緒に行こうと思ってたんだけどなぁ」


そう言って夜空を見上げたヒロ。

……いっそ泣いてくれたらいいのに──そう思った。

平常通りに振る舞う姿が見ていられなかった。

辛かったんだ。

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