初恋の向こう側

マジで何しに来たんだよ? って思ってたら、背中を向けてるヒロが言った。


「ねぇ、梓真は何の種目に出るの? 球技大会」

「バレーボールだけど。ヒロは?」

「あたしはソフト。
なぁーんだ、梓真サッカーじゃないのか」


何か言いたげな横顔で棚からサッカーボールを手に取り、こっちを見たヒロ。


「なんでサッカーにしなかったの?」

「なんでって別にバレーでもいいだろ」


ふーんなんて言いながらリフティングの真似をするが、上手く決まらないでいるから吹き出した。


「ヘタクソ」

「じゃあ、梓真やってよ」


不意に放られて宙に浮いたボールが、腕の中に収まる。

やだよと素っ気なく言って、ボールを戻すために立ち上がると、代わってベッドへ上がったヒロが雑誌を見つけて言った。


「梓真、バイトする気なの?」


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