初恋の向こう側

ベッドの上に置きっぱなしだった雑誌。

表紙には『@ワーク』の文字、求人情報誌だ。


「まぁね、暇だしさ」


言いながら俺もベッドに腰をおろした。少しの沈黙の後でヒロが口を開く。


「訊こうと思ってたんだけどね」


その瞬間、空気の温度が微妙に変化した気がした。


「どうして、サッカー辞めたの?」


やっぱりそうきたか、って思った。


「ねぇ、どうして?」

「どうしてって言われても……」

「中学までは続けてたんでしょ?」


チクリと何処かに針が刺さる。それは忘れようとしていた痛みだった。


「結構いいとこいってたよね?」


笑顔で尋ねてきたヒロのその表情が、俺の神経を刺激する。

今はまだ笑って話せる俺じゃない。

免疫がついてないんだ。



< 35 / 380 >

この作品をシェア

pagetop