初恋の向こう側
ベッドの上に置きっぱなしだった雑誌。
表紙には『@ワーク』の文字、求人情報誌だ。
「まぁね、暇だしさ」
言いながら俺もベッドに腰をおろした。少しの沈黙の後でヒロが口を開く。
「訊こうと思ってたんだけどね」
その瞬間、空気の温度が微妙に変化した気がした。
「どうして、サッカー辞めたの?」
やっぱりそうきたか、って思った。
「ねぇ、どうして?」
「どうしてって言われても……」
「中学までは続けてたんでしょ?」
チクリと何処かに針が刺さる。それは忘れようとしていた痛みだった。
「結構いいとこいってたよね?」
笑顔で尋ねてきたヒロのその表情が、俺の神経を刺激する。
今はまだ笑って話せる俺じゃない。
免疫がついてないんだ。