初恋の向こう側

スーパーの中でカートを押しながら並んで歩く。

次々にカゴの中へ食材を放りこんでいくヒロ。


「こんなに買うの?」

「だって今日はイヴだよ?」

「そうだけど、そんな頑張んなくてもいいよ。時間かかるだろ?」


するとスパイスコーナーで立ち止まったヒロが言った。


「あっ わかった。料理に時間をかけるより、あたしとベタベタしたいんでしょ?」

「そ、そんなこと言ってないだろ」

「じゃあしたくないの?
ベタベターとかイチャイチャーって」

「…いや。したくないとまでは言ってないけど…」


そこでヒロは見透かしたように笑う。


「梓真は素直だねー」

「また、からかいやがって」

「それでー他に食べたい物ないのー?」


とまた歩きだす……って、さっきの話は終了かよ?

ちょっとエロが頭に浮かんでいた俺は、肩すかしをくらったみたいな気分になった。

はぁーっ。
いっつもヒロのペースだな。

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