初恋の向こう側


誘われて近くの喫茶店に入った。

隣にはヒロ、向かいには逢坂さんのお母さんが座っていて。

この時すでに俺は、胸さわぎがしていた。何か悪いことが起こるんじゃないかって感じていた。


「病院、変わったんですよね?」


尋ねたのはヒロ。


「ええ。リハビリは今の方がいいって」

「新しい病院がわからなくて温人君に連絡したんですけど、メールしても返事がなくて」


そんな話は聞いていなかったから、俺は思わずヒロを見た。

逢坂さんが答える。


「そうだったの……ごめんなさいね。あの子ちょっと自暴自棄になってるから」


そこへ飲み物が運ばれてきた。

湯気を立てながら揺れるコーヒーを見つめながら俺は、さっきより胸をざわめかせていた。

これ以上話が進まないように。
……ヒロにバレませんように。

そんなことばかりが頭の中を巡っていた。

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