初恋の向こう側

でも、そんな願いもすぐに崩される。


「すみません。車で買い出しに行く事を頼んだのは─」

「そんなこと気にしないで。事故に遭ったのはあなた達のせいじゃないわ。

足を切断したと知った時は、私もショックだった。でも命が助かったんだもの。感謝しなくちゃね」


そう言って柔らかく笑った声に、ヒロの呟きが重なった。


「……切断?」


でもその声は小さくて逢坂さんは気づいていない。


「親の私が言うのもなんだけど、幼い頃から弱音を吐かない子でね。でも流石に今回は辛かったのね。意識が戻って片足がないことを知って…」


そこで逢坂さんは声を詰まらせた。

そしてヒロはというと、表情も無く口をつぐんでいた。


リハビリは思った以上に大変だということ。

自暴自棄になった彼が誰にも会いたがらなくなったこと。

そんな話を聞かされてる最中もヒロは黙ったままだった。


「でも今はまた頑張っているから、良かったら会ってやって」


と、帰り際に転院先の病院を教えてくれた。

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