初恋の向こう側
「暑い日でも必ず布団を被っていたのはそのせいだったんだ。
そう……あたしだけ……」
目の前のヒロが大きく息を吐き出す。
その肩を抱くことも今は躊躇われた。
「ママのことがあったから?」
「……」
「それって同情?」
「違うよ」
「じゃあ何?」
顔が見れなかった。守ってやりたいのに……。
「ヒロがショックを受けると思ったから」
「それはみんなだって同じじゃない? 愛莉だってオサムだって、梓真だって同じでしょ?
なのにどうして……あたしにだけ内緒にしたのよっ?」
大きな瞳で俺を見上げるヒロが必死に訴えてくる。
「そうやって取り乱すと思ったから 」
「当たり前でしょ。重要なことじゃない? 足を……片足を失ったんだよ?
そんなこと知らないであたし、温人君にいろんなこと言った。
『思ったよりケガが軽くてよかった』とか『少しくらい痛いのはガマンしなさい』とか。
ひどいこと……言った」