初恋の向こう側
「でも、ヒロが自分を責めたって何にもなんねーよ!」
「あたしはママの命を奪って、温人君の人生を変えたんだ……」
「…何言ってんだよ?」
―― 辛かった。
「ママが言ってたって。あたしがカナダに行ってる間いつも言ってたって『茉紘が来ない』って……。
それに首にかけた紐だって、あれはあたしが、」
「ヒロ!!」
ヒロを見ていることが、こんなに近くにいるのに何にもできない自分が辛かった。
「あの紐、あたしが持っていったものだよ。
あたし、いつも心の何処かで思ってた。小さい時からうちのママだけ違うって。家事も出来ないし、時々暴れたり変な事を言いだしたり。
あたし、いつも思ってたんだよ? そんなママの事を邪魔だって……思ってた」
「もういいってっ」
力まかせに抱きよせて、強く強く抱きしめた。
俺の肩で嗚咽を漏らすヒロを何処かへ連れ去りたかった。悲しみを全部消してやりたかった。
だけど、思うだけで俺にはできなくて。
なんにもできなくて……。
それは俺がまだたったの17のガキだからか?
それともヒロの全てを包んでやれる度量がないからか?
どっちにしても、ただ自分の無力さを噛み締めるしかなったんだ。