初恋の向こう側
「どうした?」
黙ってパンフレットを眺めていたヒロ。
オサ達のやり取りを笑うわけでもなく、淡々とページを次々に捲り、そして閉じた。
「ヒロ?」
「え? うん……」
呟くように答えてから真顔になる。
そして唐突に切りだした。
「ねぇ、皆んなに聞いてほしい事があるの」
その声にオサと愛莉も顔を向ける。
俺はその時、ヒロが何を言おうとしてるかなんてまったくわからなかった。
微塵の検討だってついてなかった。
だって、一言もそんな話聞かされてなかったんだから。
想像する事も見当をつけることも出来る筈なんてなかった。
そんな素振りも見せた事はなかったんだから。
「あたし、進学はしないよ」
その一言に俺達は目を丸くした。
「…どういうこと?」
愛莉が尋ねる。
「せっかく受かったんだけど行かない事に決めたの」
「行かないって、それでどうすんだよ?」
真顔のオサにヒロは笑顔で答えた。
「あたしね、留学するの」