初恋の向こう側

言葉が出なかった。


「あたし、臨床心理士を目指す事にしたの」


それは、あまりに突然で。
どんなことを考えどんな言葉をかけたらいいのか、わからなくなった。


慌てた素振りのオサ達が交互に質問をぶつけ、ヒロはそれに答えている。単調かつ落ち着いた様子で。


『臨床心理士になるために心理学を学びたい』

その言葉が耳に入ってきた時、ヒロの母親の事が真っ先に頭に浮かんだ。


そしてやっぱりヒロは、そんな将来の夢を語った理由をこう話した。


「あたし、ママの声を聞いてあげる事ができなかった」と。

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