初恋の向こう側
去年のクリスマスイブ。
逢坂さんの事故も、そして母親の死も、ヒロは全部自分のせいだと言って泣いた。
それから年が明け受験の忙しさに呑まれる中で、あれ以来、互いにその話題に触れることはなかったけど。
心に秘めたままでいるヒロを感じ、俺はずっと苦しかった。
何にも出来ずにいる事が……。
「言葉や態度では表現出来ない思いが、あったと思うの。
もう話は出来ないけど、少しでも近づけたら……。
歪みを抱えた心に寄り添って患者さんやクライエントの役に立てたら、そしたらあたし……ママの心の声も聞こえるようになるかもしれない。
もう遅いけど……でも、やってみたいの」
話した後で穏やかに笑ったヒロに、オサも愛莉ももう何も問わなかった。
それから俺達は、卒業旅行の話をして解散した。
本当はこのまま何処かに流れて、朝まで遊ぶつもりだったんだけど。
“予定変更”の言葉を口にしないまま明るく手を振りながら別れたんだ。
二人きりになった帰り道、俺もヒロもさっきの話には触れなかった。
訊きたいことはいっぱいあるのに今日は止めたほうがいいって何となくそう思えて、言葉に出来なかったんだ。