初恋の向こう側
それから二週間が経ち。
「梓真?」
「んー?」
「本当は、オサム達と行きたかったんじゃない?」
紙袋の持ち手を握る俺の手に遠慮がちに触れながら、ヒロが訊いてきた。
「何言ってんだよ。今の俺にとっては、こういう時間がすっごい大事なんだよ」
言いながら袋を持ち替えてヒロの手を握った。
オサと愛莉は、今頃温泉で婚前旅行ならぬ卒業旅行を楽しんでる事だろう。
ドタキャンしたのは悪かったけど、まぁ二人っきりってのもいいんじゃない?
“友達と卒業旅行”って名目がなきゃ、オサ達の親だって許してくれなかった筈だから。彼女と二人旅なんてさ。
そんな俺も、その名目を悪用して“親には内緒”ってやつを実行しようとしてるんだけどさ。