初恋の向こう側
ホテルのツインルームの窓際の丸テーブルの上に、二つの紙袋を置いた。
「見て見て梓真、お風呂広ーい!うわぁ、バルコニーまであるー!」
興奮気味のヒロが窓辺へ駆けて行く。
開け放たれた窓から入ってきた海風に髪をなびかせ振り返ったヒロが、俺を見て満面の笑みを浮かべた。
電車と地下鉄を乗り継いでやって来た高層のオーシャンビューホテル、その20階。
とはいえ、素泊まりの安いプランでとった部屋だし、残念ながら部屋はそれ程広くはないけど。
それでも高校を卒業したばかりの俺達には、ちょっと贅沢すぎたかな。
オサと愛莉との温泉旅行を断ってまで来た理由。
その一つは去年のクリスマスのやり直し。
もう一つは、受験前でちゃんと祝えなかった俺の誕生会がしたいってヒロが言ったから。
そして、もう一個。
もうじきロンドンへ旅立つヒロとの思い出に ―――