初恋の向こう側
そして太陽がすっかり沈んだ時間になり。
テーブルの上には、チェックイン前に買って持ち込んだバースデーケーキとフライドチキン等が並んでいる。
「17、18と……梓真電気消して?」
「ちょっと待って……もう1本っと」
俺は箱の中に残っていたロウソクを取りだし、生クリームの土台へ押しこんだ。
そこへヒロが、新しいマッチ棒を取りだして火を灯す。
「18歳なのに、どうして19本?」
「これはクリスマスの分。
だからこの一本はヒロが吹き消してよ?」
「…そっか、わかった」
部屋の照明を落とし、ヒロと向かい合わせの椅子に座る。
「じゃあ、唄うよ?」
ちょっと照れながらヒロが言い、静かに俺は頷いた。
ロウソクの明るさだけに灯された部屋に、異空間のようなムードが漂った。